【パスポートひったくられた! -イタリア編-】実録!トラブルトラベラーMasamiの事件簿 vol. 2
カバン奪われた in イタリア!
【実録! トラブルトラベラーMasamiの事件簿】vol. 2
私がイタリアに留学していたのは、10年ほど前のことですが、その生活を楽しんでいたある日、事件は起きたのです。
サッカーに詳しい人なら覚えているかもしれませんが、中田英寿さんが初めてイタリアに移籍したときに所属していたペルージャという街に留学した私。なぜこの地を選んだかというと、イタリア語を勉強している人たちが世界中から多く集まってくる外国人大学があること、そして、実は私の母も同じ学校で50年以上前に留学していたという縁もあったからです。
通常、イタリアでは3か月以上滞在する場合、ビザだけでなく滞在許可証というのを必ず申請しなければいけないのですが、これがパスポートと同じくらいとにかく重要な書類のひとつ。そして、留学生活半ばで、滞在許可証の更新をしなければいけない日が私にもやってきたのです。
そのため、普段は持ち歩かないような書類の数々をカバンに詰め込んで外出。無事に申請も終わり、ホッとして帰宅しようとしたところ、友達とバッタリ出会い、そのままショッピングに行ったり、ご飯を一緒に食べたりして、家へ向かったのは夜の8時頃。
そこまで遅い時間ではないのになぜかいつもよりもひっそりとしている帰り道に、一瞬不安な気持ちがよぎったので、恐怖心を取り除くためにした私の行動とは……。
aikoさんの楽しい歌を口ずさんで気を紛らわせてみた!
しかも、もう家も見えていて、あと10秒ほどで到着というところだったので、安心感から警戒心を解除。と、次の瞬間!
突然、右腕に大きな何かがぶつかってきたのです!
そうです! なんと、車です! すると、あっという間に右肩にかけていたカバンがするっと腕から引き離されてしまったのですが、まだひったくりであることを理解できていないのんきな私は、「運転が下手な人が軽くぶつかってきて、車のミラーにカバンがひっかかっている」と思っていたのです。
が、しかし! 世の中そんなに甘くないと知ったのはこのあと。当然、運転手がカバンを戻してくれると信じていたのですが、車が急発進し、カバンが窓から車の中にスポッと入るのを見た瞬間にコトの重大さを知ったのです!
「ワーーーーー!」と叫びながら車を追いかけるも、自転車にすら追いつかない私が車に追いつくわけもなく、暗闇の中に消えてしまうことに……。カバンを盗られてしまったことはもちろんショックでしたが、体中に衝撃が走ったのは、その中身を思い出したとき。
思わず呼吸困難状態に陥ったカバンの中身はこちら!
パスポート、滞在許可書、免許証、保険証明、住居証明、学生証、財布、家の鍵、携帯、クレジットカード全部、銀行のカード、辞書などなど……。
どれかひとつ盗られただけでも大騒ぎしたいくらいですけど、一瞬でこれらすべてを盗られると、最初は呆然、そして悲しみがこみあげてきてからの、やり場のない激しい怒りと悔しさが襲いかかってきましたが、運転しながらひったくりをするプロの技にはもはや「あっぱれ」というしかありませんでした。
しかも、普段はこれらの大事な書類はすべて自宅に置いていたのですが、滞在許可書の更新日ということもあり、ピンポイントで持ち出してしまっていたわけで、留学期間中にこれらをまとめて外で持っていたのは、この日だけという運の悪さ。
そして、まだまだ終わらない!さらなる悲劇が襲いかかる!
なんと、家にすら入れないという事実が発覚したのです。家の鍵も盗まれたので当然と思うかもしれませんが、当時私はイタリア人女性と2人で暮らしていたので、本来ならとりあえず家に入ることはできるはずだったのですが……。
悲劇は重なるもので、ちょうど彼女が大学の研究のためにインドに2か月ほど留学に行ってしまったばかりで、よりによってまさにその日が私にとってイタリアでの1人暮らし開始の初日だったのです。いやー、もはや他人事のようですが、こんなことってあるんですね!(涙) ここまでくると、我ながら笑うしかありません。
しかし、そんな私にも手元に残ったものがっ!
イラストでお気づきの方もいるかもしれませんが、私の左手に唯一の所持品があったのです。それは……。
セール初日に買ったスニーカー。(笑) それに気がついたときに、「なんでカバンと逆に持っていなかったのか」という激しい後悔と「これとカバンを交換してくれー!」と犯人に訴えたい切実な気持ちがこみあげてきて、思わず床にたたきつけたい気分でしたが、残されたものは大切に扱い、その後履きつぶすまで活躍したことは言うまでもありません。
ちなみに、セールの初日だったこともあり、いつもより少し現金を多く財布に入れていたことも悔やまれ、スニーカーを見るたびに心が痛みました……。
そこで、私が狙われた理由を検証!
ひったくりに遭ったあと、八方ふさがりの私は、とりあえずスニーカー片手に友達の家までダッシュし、その友達の付き添いで警察に行くことに。すると、開口一番「君が8番目の被害者だよ!」と一言。要するに、犯人は車で一斉にひったくりをし、そのまま街の外に逃げたとみられていました(イタリア警察の事情聴取が若干適当で思わず笑ったのは秘密です)。
では、なぜこの日に事件が多発したかというと、まず私がそうだったように、セールの初日でみんながいつもより多めにお金を持っていたこと、さらにその時間はサッカーの大事な試合があったので街にいつもより人が少なかったこと(イタリアらしい理由ですが)、この2つが大きな要因となっていたようです。しかも、私のように1人でフワフワと歩いていれば、ターゲットにされるのも間違いないでしょう。
では、「どうすればいいの?」と思ったあなた!
・重要な書類や貴重品を持っているときは、速やかに帰宅して安全を確保すること
・車だけでなく、バイクや自転車でのひったくりが多いので、車道側にカバンを持たない
・人気のないところは極力避け、不安を感じたら、前後左右をきちんと確認して警戒心を高める(間違っても、歌を歌ったりしてスキがあるのを見せてはいけません!)
・イベント事など、普段と違うことがある日は事件も起きやすいので注意する
・クレジットカードなどはすべてを一緒にして持ち歩くのではなく、使わない分は予備として分散させておく
そして、被害にあってしまったときに一番気をつけて欲しいこと!
私は車に当てられたといっても、坂道だったのでアクセルを踏まずに車が動いている状態でゆっくりぶつかられただけなので、幸いまったく怪我はありませんでした(だからこそ、エンジン音もせずに背後に車がいることに気がつかなかったのですが)。
でも、「もし車にひかれていたら?」とか「もし刃物で刺されていたら?」とか「もし荷物と一緒に引きずられていたら?」とか、考えたらきりがありません。そうなんです! 被害に遭った時に何よりも優先して欲しいことは、自分自身を守ることなんです!
私は、こんなにたくさんの重要書類をいっきに失くしてしまいましたが、周りに助けてもらいながらすべて元通りに戻すことができました。もちろん、この回だけでは書き切れないほど色んな手順が必要でしたし、時間やお金もかかります。でも……。
物は再発行できても、命の再発行はできません!
被害に遭った瞬間は、つい取り戻そうと抵抗してしまうこともあるかもしれませんが、相手がどんな凶器を持っているかわかりませんし、ひったくられた荷物にしがみついて怪我をしたり、最悪の事態を招いてしまったり、という話も聞いたことがあります。
もちろん、大事なものを守りたい気持ちはわかりますが、本当に大切なのは自分の安全です。そのことを絶対に忘れないでください!
もし海外でパスポートを盗難された場合はどうする?
まず警察に行って届けを出してから、現地の日本大使館に行くと対応してくれるので、安心してください。なので、事前に日本大使館がその国のどの都市にあるかというのを確認しておくとよいでしょう。
ちなみに、私のように車だと望みは薄いですが、バイクや自転車でのひったくりの場合は、とりあえず現金だけを抜き取って、カバンをそこら辺に捨ててしまうこともあるので、見つかる場合もあるようです。それを聞き、怪しまれるのを覚悟で翌日に家の近所のごみ箱を全部探しましたが、どこにもありませんでした。(涙)
当たり前ですが、くれぐれもパスポートは大切に!
ということで、諦めた私はローマの日本大使館でパスポートを再発行してもらったのですが、よりによって10年パスポートを作ったばかりだったので、被害に遭った直後の一番悲しい顔をした写真でその後10年間を過ごすことに……。
戒めの意味も込めて、そのパスポートを2014年まで使い続けましたが、表情が違いすぎるのか、空港の入国審査で「あれ?」という顔を時々されたこともありました。(笑) でも、それさえも今ではいい思い出です。
以上、「パスポートひったくられた!-イタリア編-」でした。みなさんも、貴重品の扱いにはくれぐれも気をつけてくださいね。次回は、「旅行のときに誰もが使うであろうアレが大変なことになっちゃった」の回です。お楽しみに!