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志村 昌美

天才クリストファー・ノーラン「僕はスマホを持たない」納得の理由とは?

2017.9.5
仕事やプライベートなど、人生においてはさまざまな壁にぶち当たるものですが、そんなときこそ、過去の歴史から教訓を学ぶのも大切なこと。そんななか、今回ご紹介したいのは、絶体絶命の危機に立ち向かった男たちの姿を描いた映画『ダンケルク』です。そこで、本作に全身全霊を傾けたある方にお話を聞いてきました。それは……。

仕事やプライベートなど、人生においてはさまざまな壁にぶち当たるものですが、そんなときこそ、過去の歴史から教訓を学ぶのも大切なこと。そんななか、今回ご紹介したいのは、絶体絶命の危機に立ち向かった男たちの姿を描いた映画『ダンケルク』です。そこで、本作に全身全霊を傾けたある方にお話を聞いてきました。それは……。

いま映画界でもっとも注目されているクリストファー・ノーラン監督!

【映画、ときどき私】 vol. 110

『ダークナイト』や『インセプション』など、世界中の映画ファンを魅了し続けているノーラン監督ですが、最新作は早くも「来年のアカデミー賞の最有力!」といわれている話題作。そこで今回は、監督本人に直撃し、『ダンケルク』へかける思いや原動力を語ってもらいました。

本作の題材となったのは、フランスの北端にあるダンケルクという地で実際に行われた史上最大の救出作戦。

初めて実話に挑んだ作品となりましたが、描く際に意識したことは?

監督 史実に基づく映画を作るのは初めてだったので、まずは実際にダンケルクにいた方々の証言や実体験を入念に調べ、徹底的にリサーチを重ねていくことにしました。なぜなら、観客の方々にまるで当事者であったかのように感じてもらえるような緊迫感のある主観的な映画を作りたかったからなんです。

この作品を撮るにあたっては歴史学者の方にアドバイザーとして協力していただき、そのおかげで存命中の帰還兵たちにもインタビューをすることができましたが、あの浜辺で何が起きたのかを直接聞くことができ、非常に心を揺さぶられました。

いまのタイミングでなぜこのテーマを選んだのか教えてください。

監督 この時代だからということよりも、僕としてはイギリスだけではなく、世界中の観客に訴求できるような根源的な話だと思ったからなんです。八方から恐怖がやってくるなか、降伏するかあるいは死を選ぶかという究極の状況で、民間と軍が力を合わせて、窮地から兵士たちを救い出そうとするわけですが、この戦いは独特なストーリーであり、かつ普遍性があると思いました。これまで作られていてもよかったはずなのですが、たまたま僕にチャンスが舞い降りてきたこともあり、今回作ることにしたのです。

本作もこれまでの作品同様に時間の使い方がおもしろいですが、時間にこだわる理由は?

監督 僕は脚本を書いたり、映画の構図を決めたりするうえで「主人公の主観を見せる」ということにこだわりがありますが、それが時間へのアプローチでもあります。なので、今回の『ダンケルク』でもそれぞれの立場による時間感覚を表現するために、時間を巧妙に操作することにしました。そういったことは、映画にしか成し遂げられない特有の力だと僕は思っていますが、それによって観客のみなさんにインパクトを与えることができるのです。

戦争映画といわれると女子は敬遠しがちですが、その理由のひとつとしては、目を覆いたくなるような残虐なシーンが描かれていることが多いから。しかし、この作品にはそういったシーンがなく、これまでの戦争映画とは一線を画するような作品であることも大きな特徴。

では、戦争映画にはつきものである残虐なシーンを描かなかった理由は?

監督 今回、血を見せたりしなかった理由は、このダンケルクの話がほかのいろんな戦争の話とはそもそも性質が違うからというのがあります。なぜなら、これは戦闘の話ではなくて、撤退作戦の話だということなのです。そこで、このストーリーを語る手法として、サスペンススリラーを描くアプローチを取ることにしました。

従来の戦争映画であれば、戦争がいかに恐ろしいかということをホラーとして描いていたと思いますが、本作でサスペンスの手法にしたのは、ホラーのように目を背けたくなるどころか、目が釘付けになってしまうような作品にしたかったからなのです。血やグロテスクなものは見せず、敵の姿も見せていないので、劇中にある緊張感というのは、ほかの戦争映画とは少し違うものになりました。これはあくまでもサバイバルの話ですが、ジリジリと寄ってくる敵の存在感や時間との競争という部分もこの作品をサスペンスフルなものにしていると思います。

ノーラン監督といえば、CGに頼らず実写での映像へ強いこだわりを持っている監督ですが、今回も想像を超えるような圧倒的な迫力を誇る映像は最大の見どころ。

陸・海・空と撮影をするなかで、過酷だったことはありましたか?

監督 すべてをリアルに撮ろうとしていたので、海も船も飛行機も全部が本物でしたが、悪天候に見舞われたり、風が激しかったり、海で高い波が立ったりしたので、本当に大変でした。でも、これは史実をベースにしているので、当時の人たちが経験したことに比べたら、僕らは戦争ごっこをしているだけなので、彼らの現状と比較するのはとんでもないという謙遜する気持ちにはなりました。そこは今まで僕が撮った作品とは違う部分だったと思います。

今後、映画化してみたい題材はありますか?

監督 ここで言ってしまうとほかの人がやってしまう可能性があるのでタイトルは言えないですが、多くのコミックや本など、いろんなものを僕は消化しています。作品選びをするときに一番の推進力になるのは、自分がそのストーリーに心から動かされ、どれだけ共感できるかということ。映画を作るのには、相当な時間を費やすので、そのぐらいの強い思いがないと作りたくないと思ってしまいますよね。

そんなノーラン監督は、「スマホは思考の時間を奪われる」という考えから携帯もメアドも持たない主義。

逆に監督の思考に刺激を与えたり、インスピレーションを掻き立てたりする原動力は何ですか?

監督 まずは音楽が好きでたくさん聴いているので、いつも音楽プレーヤーを携帯しています。それから、読書をしたり、テレビや映画を観たりするのも好きですけど、自分を一番インスパイアしてくれるのは、やっぱり映画と音楽かなと思います。もちろんそれだけではなくて、日々感じる文化の多様な側面やいろんなメディアからも刺激を受けています。

僕がスマホを使わないのは、時間の管理をしたいからなんですよ。というのも、スマホで何かを調べているときというのは、役に立つこともあったり、楽しいこともあるかもしれませんが、その内容がゴシップだったりすることもあって、実際には相当な時間を費やしてしまいますよね。そんなふうにスマホを使っているとすぐに時間を奪われるので、そういうのはなるべく避けたいと思っているだけなんです。

最後に、この作品を通して観客に届けたい思いがあれば教えてください。

監督 もし、あの出来事がいまの我々に語っていることがあるならば、「いまの世界は、個人として達成できることや個人の業績をもてはやす傾向にあるけれど、そうではなくて集団で協力し合ってできることの偉大さがあり、みんなで力を合わせれば個人では成し得ないような逆境でも乗り越えることができる」というメッセージです。それはイギリスだけではなく、どんな文化圏であっても、どんな地域でもみなさんに訴えかけ、共感できるものだと思っています。

インタビューを終えてみて……。

世界中の映画界がつねに注目している監督であり、天才ともいわれているだけに、その存在感やオーラには思わず圧倒され、短い時間ながらもたくさんの刺激を受けました。本作は “ノーラン監督史上最高傑作” との呼び声も高いですが、作品ごとに進化し続けているだけに、今後どこまで行ってしまうのだろうかという期待とともに、これからも追いかけ続けていきたいと思います。

目の前に広がる驚異の映像にしびれる!

どんな逆境に見舞われたとしても、勇気と忍耐と連帯感で乗り越えようとした彼らの不屈の精神は、誰の心も揺さぶるはず。そして、戦場へと一気に観客を引き込む臨場感溢れる映像と圧倒的な音楽、そのどれもがスクリーンで味わうべき衝撃の映画体験。1秒たりとも息の抜けない緊迫感とノーラン監督が本作に込めた情熱をぜひ全身で体感してください!

ストーリー

1940年、フランス北端に位置するダンケルクに追い詰められていたのは、英仏連合軍の兵士40万人。背後には海があり、陸と空から攻めてくる敵に囲まれ、もはや逃げ場のない絶体絶命の状況だったが、そんななかでも若き兵士たちは生きることを諦めずに戦い続けていた。
いっぽう、母国のイギリスでは対岸にいる仲間を助けるため、民間船までも動員して救出作戦が動き始めることに。はたして、史上最大の救出作戦の行方とは……。

迫力に鼓動が高まる予告編はこちら!

作品情報

『ダンケルク』
9月9日(土)全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/
 

この記事を書いた人

志村 昌美
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映画宣伝マンを経てライターに転向し、海外ニュースや映画紹介、インタビューなどを中心に執筆。この連載では、新作映画を紹介しつつ、自身の体験談と主観満載でお届けします。 また、イタリアとイギリスへの留学経験から、現在は日・英・伊・仏のマルチリンガル目指して猛勉強中! 日々試写で観る新作の感想など、随時つぶやいてます♪ https://twitter.com/masamino_19