志村 昌美

大切な人の余命を知ったらどうする? しあわせな最期の過ごし方を考える

2017.7.7
先日、日本中を駆け巡った悲報には、同世代の女性として心を痛めていると同時に、自らの生き方について考え直している人も多いはず。そこで、誰もが避けては通れない人生最期のときを描いた感動作をご紹介します。その映画とは……。

スペインが生んだ珠玉の物語『しあわせな人生の選択』!

【映画、ときどき私】 vol. 100

スペインで俳優として活躍し、愛犬とともに暮らしていたフリアンのもとに、ある日突然カナダに住む昔の友人トマスが現れる。なぜなら、フリアンが病に侵されているにも関わらず、すでに治療をやめて、身辺整理をしていることを耳にしたからだった。

トマスは追い返されそうになるも、フリアンと一緒に4日間を過ごすことに。

久しぶりの再会ではあったものの、次第に昔と同じような遠慮のない関係になる2人。愛犬の里親を探したり、しばらく会っていない息子に会いにアムステルダムへ行ったりと、残り少ない日々を楽しむのだった。そんななか、フリアンが決断した人生の選択とは……。

いくつもの感情を引き出してくれる奥深さ!

本作の監督が、「母親の闘病生活で実際に経験した思いをユーモラスな形で表現したかった」というだけに、よくあるお涙頂戴映画の枠に収まっていないのがこの作品の素晴らしいところ。だからこそ、笑いと涙だけでなく、温かさでも胸がいっぱいになり、自分らしく生きることの意味を感じさせてくれるのです。

そして、「もし自分の大切な人の余命を知ったら?」もしくは「もし自分が余命を宣告されたら?」という誰にでも起こり得る瞬間について考えることで、自分にとって何が大切なのかにも気づかされるはず。

何といっても、男同士の絆が熱い!

今回は、フリアンとトマスがみせる男の友情だけでなく、父と息子の愛情も描かれていますが、思わず憧れてしまうのは、女同士の関係性とは違うものがあるからこそ。言葉を超えて、心で感じ合っている姿には、「生まれ変わったら男になってみたい」とさえ思ってしまうほど、グッとくるものがあるのです。

そんなフリアンとトマスを演じているのは、アルゼンチンを代表するリカルド・ダリンとスペインを代表するハビエル・カマラといった実力派俳優たち。ベテラン2人がみせる繊細かつ、重厚感のあるかけ合いは見どころのひとつでもありますが、愛犬トルーマンを演じたトロイロも名優たちに負けない名演技を披露しているので、こちらもぜひ注目してみてください。

自分の気持ちに正面から向き合うことの意義を感じる!

どんな人にでも、いつかは必ずやってくる人生の終わり。「自分にとってしあわせな最期の迎え方とは何か」と問いかけることは、「いまをどう生きたいか」と考えることと繋がっているものなのです。

かけがえのない人と過ごす時間がいかに愛おしいものであるかということ。そして、人生には別れがつきものではあるけれど、それ以上に人との出会いがもたらしてくれるものがいかに大きいかということに改めて気がつくはず。心に響くセリフの数々だけでなく、言葉には表せない人と人の絆に、湧き上がる思いを感じてみては?

胸に訴える予告編はこちら!

作品情報

『しあわせな人生の選択』
7月1日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
配給:ファインフィルムズ
© IMPOSIBLE FILMS, S.L. /TRUMANFILM A.I.E./BD CINE S.R.L. 2015 
映倫 R15+
http://www.finefilms.co.jp/shiawase/