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「マームとジプシー」藤田貴大さん演出作品の舞台衣裳を、 スタイリスト大森伃佑子さんが担当!

写真・小笠原真紀 インタビュー、文・望月リサ — 2016.12.7
『anan』本誌(12月7日発売)で「マームとジプシー」主宰の藤田貴大さんが演出する舞台『ロミオとジュリエット』を紹介しました。じつはその時、藤田貴大さんと大森伃佑子さんは、もっともっとたっぷりじっくり、対談されていたのです。そのお話がとっても面白くて、紹介しないのはもったいない!ということで、ananwebでは、おふたりの対談拡大版を公開します。ロング対談をどうぞお楽しみください!
藤田貴大さんと大森伃佑子さん。
藤田貴大さんと大森伃佑子さん。

 ミナ・ペルホネンなど、これまでにも人気ファッションデザイナーとのコラボレーションで舞台を作ってきた「マームとジプシー」主宰の藤田貴大さん。藤田さんにとって衣裳は、舞台を彩る単なるピースではなく、繊細に編み上げ構築された作品世界を支える要素のひとつ。次回公演の『ロミオとジュリエット』では、衣裳に、雑誌『オリーブ』や『装苑』などで独自の世界を創り上げてきた、スタイリストの大森伃佑子さんが参加することに。

藤田 大森さんは、1年前から「マームとジプシー」の公演には欠かさず来てくださっているんですよね。しかも毎回、すごく丁寧に作品を観ていただいている印象があって。

大森 もう1年前なんだね。初めて藤田君と出会った時、衝撃だったんですよ…すごく。それは、拝見した作品の衝撃もですけれど(※編集部注:この時に大森さんがご覧になったのは、漫画家・今日マチ子さんの作品を題材にした『cocoon』だそう)、青柳いづみさんをはじめとする出演者の方々だったり、スタッフの方々…それは受付をやっている女の子たちも含めてだったり、何より、藤田君という人自体が。あまりに衝撃的過ぎて、劇場を後にしても自分のなかで感情の整理がつかなくて、何を食べようかって話になっても、何を食べていいのかわからない。それで結局、赤坂のマクドナルドを検索して、池袋からタクシーで行って、テイクアウトして帰ったの。普段はファーストフードなんて食べないし、観劇の後にきちんとしたレストランで感想を語り合うというような、大人の楽しみ方だって知っているのにも関わらず。でもその日の夜は、それくらいの非日常的なことをしないと、自分のなかでどうにも辻褄が合わなくなっちゃったのね(笑)。

藤田 僕にとっても特別な出会いでした。じつはあれから、自分のなかで大森さんの仕事って、いったいどういう仕事なんだろうって、考える時間が自然と増えていったんですね。その時に思ったのは、大森さんは「DOUBLE MAISON」というご自身のブランドも持っていらっしゃいますけれど、いわゆるほかのファッションデザイナーの方がやっているような、ゼロからイチを作り出す発想とは違うのかもしれないな、ということ。それよりどちらかといえば、僕が作品を作る時に役者を配役したり、照明や音響を誰にするかキャスティングするのと似ているんじゃないかって。服を着せることだけをやっている人じゃないんだなって思って、興味が湧いて、どこかで一緒にやりたいって考えていました。ただ、やるならばタイミングがすごく重要だと感じて、かなり探ってたんですよ。それで、大きい劇場でやるこの企画でって思って。

大森 じつは私、最初に会った時から、藤田君やいづみちゃんとは、いずれもっと近い距離に行けるような予感がしていました。だから、声をかけてもらった時にすぐに「やりたい」と思ったのかもしれない。普段は、どんなに魅力的なお仕事でも、自分が本当に相手の期待に応えられるのか、希望に添えるのか、私でいいのかちゃんと確認してからお引き受けするようにしていて、どんなにうれしくても二つ返事はしないって決めているんです。でも、その時は二つ返事しちゃったのよね。後になって、「ちょっと待って」って、ちゃんと確認はしましたけど。

藤田 ああ、そうだったんですね。

大森 その時、藤田君が「スタイリストの人に会ったのは大森さんが初めてで、初めて(一緒に仕事をするの)が大森さんだった」ということを言ったんですよ。それで面白くて同時に、妙に納得したというか(笑)。

藤田 それ、少し語弊があるんで、ちょっと言い訳させてください! 僕がそう言ったことは確かですけれど、けっしてスタイリストさんなら誰でもよかったわけじゃありませんから。もともと僕は『装苑』を読んじゃうような男子だったから、大森さんがどんなお仕事をされている方かは見て知っていたんです。だからこそ、初めてお話しさせていただいたスタイリストさんが大森さんだったことが奇跡だって思ったし、お仕事をしてみたいと思ったんです。

大森 うん。私もね、藤田君が簡単な気持ちで言い出したことじゃないんだろうなというのは、感覚的にわかってました。だから、初めてが私だったこともうれしかったし、そのこと自体、すごく重たいことだと受け止めていたし。

藤田 そう思ってくださっていたことが、すごくうれしいです。いまさら僕が説明するまでもないことですけれど、大森さんの持っている世界とか、ここまでずっと大事に守り続けてきたものっていうのがあって、それが、ここまで僕らがマームとしてずっと大切にしてきたものと噛み合うんじゃないかって、どこかで確信はあったんです。運命じゃないけれど、出会いからここまでの流れをすごく大事にしたいなって思っていました。それで実際に作業を始めてみたら、想像以上に噛み合いましたよね。

大森 そうそう、私もね、すごく噛み合ったって思った。この仕事をやり始めて30年近くいろんな年齢の人たちと一緒にやってきたけれど、これまで仕事に対して厳しさを求めてキリキリすることが多かったのね。でも、藤田君と一緒に作業を始めてみて、あまりにストレスがないことに驚いているんですよ。

藤田 それはうれしいです。

大森 今回ね、これまでの自分の経験を生かしながらも、私のなかで作るんじゃなくて、私が丸裸で藤田君たちの世界に入っていって、そのなかでやりたいなって思っているんです。これまでは自分のフィールドで考えて答えを出すということをずっとやってきたから、じつはそういうことって、30年やってきたなかでもほぼ初めてに近い。ちょっとしたチャレンジですね。

藤田 たぶん僕ら、悩み方が似ているんじゃないかと思うんですよ。ものを作っていくなかでの時間の掛け方とか。

大森 うん似てるね。いまこの年齢で、こんなふうに仕事ができるなんて嬉しいし、すっごい楽しい!

藤田 いまは僕ら、とにかくすごい量のLINEを送り合ってますよね(笑)。

大森 ほとんどが不毛な会話だけど(笑)。

藤田 たまに大森さんから、自宅でトルソーにコーディネートした写真が送られて来ることもあるけれど、主にやりとりしているのは〝言葉〟ですね。19歳の頃の大森さんのことだとか、女子についてだとか、集団とはっていう話だったり、ブランドについてだったり、もろにデザインというよりも、もっと違うところから起こそうとしてるんです。

大森 そう。具体的な話は全然してないよね。パンツかワンピースかっていう話すらほとんど出ない(笑)。でも、そういう会話が成り立つってことがすごく面白い。藤田くんの舞台には、考えなければ読み解けないものがたくさんあって、いたる場所に、彼なりのルールや意味が貫かれているから、衣裳にもちゃんとその意味や考えを持っていないとって思ったんですよね。そもそも私は、スタイリングするときに、この服を選んだ理由を絶対に説明できなければいけないと思っているんだけれど、今回に関してはとくにその気持ちが強いんです。それは、これが紺色で長くて…というようなことじゃなくて、彼女には闇があって、放課後一人で遊んでいるような人だから脚は見せたくないの、というような。そうやってひとりずつに個性を出してあげるためにも、それぞれの役を理解する作業が重要で、そのために言葉をやり取りしているというのかな。

藤田 僕は演出家として、俳優と稽古しながら役作りをしていっているんだけれど、たぶん大森さんも役作りというか、すごく作品について妄想してくれている気がします。僕が驚異的だと思うのは、大森さんという人が、19歳の頃の感覚をずっと持ち続けているってことなんですよ。どうしたって、大人になっていくと、過去に考えたことだったり、思い出だったり、感じた気持ちって、どんどん省略して簡略化されていくものだと思うんですよ。例えば、過去の思い出を飲み会の席で何度か話していくと、そのうち話が整理されてきて、もともとあるテキストのようになっていくじゃないですか。でも、大森さんにはそれがなくて、その時のまま保たれているんですよ。整理されていないというか。その整理されてないニュアンスが、非常に「マームとジプシー」に近い気がします。こういう現場って、例えば衣裳を誰かにお願いしたとすると、その方の頭のなかで考えて出てきたものを「こうしましたから」って見せられて、「僕はこう思うから、ここはパンツにしてください」っていう流れになってしまうことが多いと思う。僕がいわゆる舞台衣裳の人と仕事をしないのはそういうところで、いわゆる僕の世界の付属になる衣裳っていうのは、全然僕が見たいものじゃないんですよね。でも、それはこのふたりの間にはないんです。お互いに思うことをやり取りし合って、そこから具体的なものになっていけばいいかなって。

大森 ただ、舞台の衣裳を手がけるのが初めてだから、そこの部分での悩みはあるんですけどね。撮影の場合は、奇跡の一枚が撮れればいいわけだけど、生で動く人が着るわけで、ごまかしがきかないんです。これまでライブの衣裳はやったことがあるんだけれど、舞台の場合、毎日2〜3時間、それを何日間も続ける衣裳をやることになるわけだから。

藤田 写真っていう究極的に一瞬のことを雑誌という媒体のなかでやってきた大森さんの世界が、舞台では時間として引き伸ばされることになるわけですよね。しかもそれが生身で動く。そのことを楽しみにしている人ってめっちゃいると思うんですよ。それは僕自身も同じで、大森さんの奇跡的な一瞬を舞台という媒体のなかでどう作っていくのか、それが観られるのはこの舞台しかない。これって、すごい贅沢な時間ですよね。だからいろんな世代の人に観てほしいんですよ。

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大森 スタイリングをする時、雑誌では見えない裏のちょっとした部分をすごく大事にしているんですね。服を少しデフォルメして見せるのが私は好きなんだけれど、例えば、スカートを膨らませたいってなった時、ただ膨らませるんじゃなくて、ちょっといびつに見せる計算をしてパニエを入れるようにしたりするんです。それも、ただ膨らませるんじゃなくて、それぞれの個性に合わせた膨らませ方、いびつさとか不自由さがないとダメなんだと思うんですよ。舞台だと動くから、そこまでそれをやれるかはわからないけれど、偶然にでもそう見えるような仕掛けを作ったり、細かいところまでこだわって、きっちり見ていきたいなって思っています。

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藤田 いまの話に出て来た〝不自由さ〟とか〝いびつさ〟とか、そういう物理的なこと以外の言葉がね、すごく女子のメンタリティだと思うんですよ。作り上げるところに至るまでの過程、そういうところがね、すごくマームと近いから、めちゃくちゃ信頼できるんです。

大森 雑誌だったら、モデルが一番キレイに見える方法論で作っていくんですけれど、今回は大事にするのはそこじゃないと思っているんですよ。例えば、ちょっとぽっちゃりしている子がいたら、痩せて見えるようにするんじゃなくて、その子なりのかわいさを探して見せる。もしかしたら、もっと膨らませて見せるってこともあるかもしれなくて、個々の不得意なところをきっちり出してあげるほうが、よりかわいさの個性に繋がるんじゃないかと思っています。30年間もスタイリストをやってきたけれど、それまで考えたことがなかったから、それに気づいたのはついこの間のことなのね。自分のなかでは大きな発見だし、やればやるほど新しい何かが見つかって、ほんといまはワクワクしっぱなしです。

藤田 今回、大森さんにお仕事をお願いするにあたって、『ロミオとジュリエット』っていう題材があることで、より遊べるんじゃないかなと思ったんですよ。それはファンとして単純に大森さんが作る『ロミオとジュリエット』の世界を見たいというのもあるし、ものすごく生理的な感覚で、世界観がフィットするんじゃないかと思ったんです。大森さんの自宅にお邪魔した時に、これまでやられたお仕事のほぼ全部を見せていただいたんですよね。そのなかに静岡の森の中で撮影した写真があって、時代がいつだかわからない服を着ているんだけれど、モデルさんが自転車を引いていて、それがすごく〝いま〟な感じがしたんです。僕の作る『ロミオとジュリエット』は中世とは限定していないけれど、どこか中世の雰囲気も保ちながら、ちゃんとそこに〝いま〟を描こうとしていて、大森さんも同じことをやろうとしていたんじゃないかって。

大森 私も似ているものを目指そうとしているんだとは勝手に感じています。ある時期から私、十代の少女の普遍性にこだわって仕事をしていきたいって思うようになって、いまだにその気持ちは変わらずに持っているんだけれど、たぶん藤田君は、そこを見てくれているんじゃないのかな。私がやっているのはファッションではあるけれど、トレンドの服ではなくて、ずーっと好きって思える服なのね。でも、そのなかにもやっぱり〝いま〟っていうのがあって、同じ紺のセーターでも、去年はちょっとぶかっとしていたけれど、今年はジャストがいいとか、少し形が違っていたりする。だから、ずーっと同じではないの。でもじつは、その微妙な違いが、女子にとってはすごい重要だったりするんです。さっきの話は、そういうことにちょっと似てるのかもしれないね。

藤田 去年の夏、大森さんが「DOUBLE MAISON」のお店を京都に出していた時に、僕、ふらっと行ったんです。そこでもらったポストカードに女子のクローゼットについての文章が書かれていて、それがすごくいいなって思ったんです。女子のクローゼットには、すごく大事なものがしまわれているっていうところがね、すごく面白いなって思ったんです。男子の僕が、その真意をどこまで理解できてるかはわからないけれど、それが宝箱じゃなくてクローゼットなんだっていう感覚。それは、僕が劇場という空間のなかで、大切にしているものとすごく似ている感じがしています。僕はよく、この間の芝居で書いた言葉をまたこの芝居のなかに入れるっていうことをやっているんですけれど、それはその言葉が大事だから何度だって書くんですよね。自分の作りたい世界の維持の仕方が、すごく近いというか。

大森 私、クローゼットって、記憶みたいなものだと思っているんです。明日着る服を安く買うのもいいんだけれど、30年前に買っていまもクローゼットの中にしまわれているものって、たぶんものすごく好きで買ったもののはずで、いまも好きだと思えるものなんですよね。本当に好きだと思えるものをちゃんと買っておくと、30年使わなくても、その好きって気持ちは変わらないんです。そういう変わらなさがいいなって思うし、私はこの仕事を通して、女子にそういう買い物の仕方をしなさい、って常々言い続けてきたつもりでいます。女子のクローゼットの膨らみっていうのは、もう着ることはないかもしれなくても、ここに大切なものがあるよっていう意味なんじゃないかと思っているんです。

藤田 その話、僕にとっては興奮ポイントでしかないです。今回、僕のこともマームのことも知らなくても、大森さんの衣裳だけを観に来たいと言ってくれる人がいたらいいなって思うんですよ。見終わった後の感想が、大森さんの衣裳が素敵だった、で全然いい。でも、もしかしたらファッションにしか興味のなかったその人が、数日後に『ロミオとジュリエット』をスマホで検索することだってあるかもしれないですよね。僕は、ジャンル間のやり取りってそうあるべきだと思うし、そうなればすごく豊かなんじゃないかって思っているんです。ただ、これだけのことを考えて作ったものが、たった10回の公演で消えてなくなるんですよ。舞台って。

大森 でもそうやって消えていく儚さもいいよね。

藤田 物理的にはそこからなくなりますけれど、観に来た方の記憶に残っていくものになればいいなと思っています。

大森 取り出して誰かに見せたりすることはできないけれど、でもちゃんと大切に自分の記憶の中にしまってくれる人はいると思うのね。私自身、そういうたくさんのものがあって、いまここにいれたりするわけだし。

藤田 うん。本当にそうですね。

ふじた・たかひろ 「マームとジプシー」を主宰し、戯曲と演出を手掛ける。11年に岸田國士戯曲賞を受賞。いま最も注目を集める演劇人。

http://mum-gypsy.com/

おおもり・ようこ 80〜90年代雑誌『オリーブ』の爆発的人気を牽引。現在、「DOUBLE MAISON」のディレクターもつとめている。

http://www.doublemaison.com/

これまでの藤田貴大作品と舞台衣裳の素敵な関係。

『書を捨てよ町へ出よう』(15年)
衣裳・ミナ ペルホネン

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同名の寺山修司作品を題材に、時代を生きる若者を描く舞台に。ミナの服の持つクラフト感や物語性までもドラマのなかに反映させた。

撮影・引地信彦

『小指の思い出』(14年)
衣裳・スズキタカユキ

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ファンタジックでありながら現実世界の容赦ない非情さも秘めた野田秀樹の初期戯曲に、儚さを感じさせる美しい衣裳が映えた。

撮影・篠山紀信

Information

12月10日(土)~21日(日) 池袋・東京芸術劇場 プレイハウス 作/ウィリアム・シェイクスピア 翻訳/松岡和子 上演台本・演出/藤田貴大 S席5500円 A席4500円 問東京芸術劇場ボックスオフィス☎0570・010・296 
www.geigeki.jp

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イラスト・ヒグチユウコ