【兄は障害者】このままでは中卒に! 混乱する両親と反発する兄|#2

文・心音(ここね) — 2017.6.8
“私の兄は、障害者”。見て見ぬ振りして、直視できない現実を避けるように生きてきた、妹目線の連載です。 高校退学を言い渡された後、兄の様子は徐々に変わって行くことに……。

【兄は障害者】vol. 2

さらにエスカレートし始めた、兄

一般的に高校は自主退学という方向で進めることが多いですが、兄の場合は何度も停学を繰り返したあげく、強制退学だったと記憶しています。夜中にフラフラと出歩いては、家族が寝静まった後に帰ってくる毎日。

当時は、まだ携帯電話が普及していない時期だったため、夜中にどこにいても連絡を取ることができません。見かねた両親は、門限をつけて深夜になると家の鍵を閉めるように。今でも鮮明に覚えていますが、夜中家に帰ってきた兄は近所迷惑なことも気にせず「ピンポーン」を連打し、「開けてくれー!」とドアの前で叫ぶことも日常茶飯事で、近所の犬たちが兄の大声で遠吠えをし始めるなど、近所では “腫れもの” になっていきました。

寝られない日々が続き、ピリピリした空気へ

当時、両親が起床するのは6時。しかし、家族が寝静まった夜中の2時や3時にインターホンを鳴らしまくる兄の行動が続くため、寝不足から両親共に些細なことでもイライラする雰囲気に変化していったのです。

深夜、叫び続ける兄を止めるために、階段を降りて鍵を開ける父。「いい加減にしろ!って言ってるのが、わからんのか?」と滅多に怒らない父が徐々に荒々しい言葉を使うようになった姿を、私は階段の途中まで降りてソッと覗き込むように冷静な目で見つめていました。

まだやり直せるから、立ち直れ

両親と兄の対立は徐々にエスカレートしていくばかり…。

しかし、両親は冷静でした。履歴書に書ける兄の最終学歴は「中学校卒業」。「このままでは、中卒の学歴で止まってしまう」と、兄にどれだけ「クソババア」「うるせえ」など暴言を浴びせられても「自分の子供だから」と手を焼きながら予備校のパンフレットを集めてきたり、定時制高校の見学日をチェックしたり。また、退学した高校付近では兄が辞めた噂が残っていたため、それを気遣った両親はちょっと離れた予備校にしたらどうだ? と兄のメンタルを配慮する様子も。本当に思いやりのある両親だなと心から感じていました。

一方で私の心の中では、正直「自分が蒔いた種なんだから、自分のせいじゃん」と冷ややかな目で兄を見ていた気がします。“もう、ほっとけばいいのに…”。だんだん私は兄を敵視するようになっていきました。昔は手を繋いだり、一緒に遊びにいく仲だったのに。会話すらしたくないなんて、人間の心は不思議ですね。

制御が聞かず、どんどん暴力的に

事態は悪化の一途をたどります。ついに、父が兄に手を出したのです。睡眠不足と心労が続き、イライラが募ったのでしょう。それに反発した兄も、次第に物を壊したり、父や母、さらに私にまで暴力を振るうようになっていきました。荒らされた家のなかは家族みんなの心の内を表しているよう。いったい私たちはどうなってしまうのでしょう。薄黒い雲が私たち家族にまとわりついて、一向に離れてくれません。このままずっと闇の中でもがき苦しみ続けるのか、幼い私には知る由もありませんでした。

【関連記事】
【兄は障害者】家族らしい思い出は一瞬。優しかった兄が変わり始めた #1


【あわせて読みたい超絶人気記事♪】

【ちょッ…惚れたわ!】男が思わず「ドキッとする」女友達からのLINE
【アレが見えて最悪】男性が映画デートで女性にがっかりするポイント3選
【また同じアレ…】男性が付き合っていてつまらないなと思う彼女の特徴

(C)RinoCdZ/Gettyimages
(C)Stephanie_Zieber/Gettyimages
(C)lolostock/Gettyimages